蕎麦は「生粉打ち」か「二八」か

まず最初にラーメン、うどんのように小麦粉から麺を作る場合、水を加えてこねることにより粉中のタンパク質グルテニン、グリアジンの二者が結びつきグルテンという不溶性のタンパク質かでき、このグルテンが互いに結び合い網状構造を造り、麺の骨格を形成しています。
「生粉打ち」とは蕎麦粉だけで作りますが、蕎麦粉にはグルテンを作り出すタンパク質が無いので、水溶性タンパク質と澱粉の付着性だけでつながっています。そのため結合力がグルテンよりも弱く、普通は「つなぎ」として中力粉、卵水、山芋を付加するのが一般的です。
こだわりの蕎麦屋さんでは「生粉打ち」こそ本道としていますが、老舗の中でも小麦粉つなぎ2割、蕎麦粉8割の「二八」が多く、別メーニューで「生粉打ち」を出すお店が多いようです。「生粉打ち」の欠点は保水性が無く、打ってから時間をおくと麺線がボロボロになってしまうことです。「二八」の場合はグルテンがある程度形成されており、またグルテンには保水性があるので、麺線は崩れにくいとされています。
ではどちらが本来の蕎麦なのでしょうか?
混ぜ物のない「生粉打ち」こそが粋に蕎麦を味わう食べ方なのかもしれませんが、江戸の時代から蕎麦は「二八」で通っています。嘘が嫌いな粋な江戸っ子が2割もつなぎの入った蕎麦を本当に好んで食べたのでしょうか?思うに粋に食べるにはやはり大店の「生粉打ち」で、屋台や辻売りの様に製麺してから時間を置かねばならない場合は「二八」の方が提供しやすかったからではないでしょうか。また「蕎麦は噛まずにのみこめ」と言われていますが、「二八」の方が「生粉打ち」よりものど越しが良いというのが世間一般での話の様です。
つまるところ、どちらがというのではなく、日本古来の粋な風情を楽しむなら「生粉打ち」で、粋な麺食を手軽に味わうなら「二八」、という風に食べ分ければどちらでもよろしいのではないでしょうか。
「生粉打ち」以外は「駄蕎麦だ」と決めつけるのはつまらない事です。


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